ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

ウズベキスタン東部へ

Posted by nakamura.m on  

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 ウズベキスタンの東部「フェルガナ盆地」は、首都タシケントの南東にある炭鉱の町アングレンから、天山山脈支脈のカムチック峠を一本道で超えた向こう側に広がります。
 この一本道は天候や政治的な理由からの突然の閉鎖、通行止めのリスクがあるのと、そもそもウズベキスタンでは峠道の大型バス通行が禁止されているので、南部と同様観光ルートではありませんが、今年の夏に峠を貫く鉄道のトンネルが開通し直通列車も走り始めたので、今後は随分と行きやすくなることでしょう。

2016/08/28/メロン

 さて、そのフェルガナ盆地はまさに桃源郷。周辺地域と比べて周辺の山から流れる豊かな水量に恵まれ、春はチューリップと杏の花が咲き誇り、夏はメロンの原産地の名の通りフルーツ王国。峠道には舌がとろける山羊の自家製ヨーグルトやチーズ玉を売る屋台が並びます。
 一般的日本人のステレオタイプのイメージ思考では「〜スタン」とは荒涼とした砂漠か荒地となることでしょうが、彼の地を一度訪れれば、そのひどくこびりついた認識が誤りである事がわかることでしょう。
 峠を越え、盆を移動中の車窓では町と町の切れ目がそれほど感じられません。その住みやすさから人口密度は日本並みだとのことです。それを知っているとなんとなく中央高速道の甲府盆地を縦貫する感覚に相似していなくもないと思います。
 その穏やかな自然環境も関係してか、盆地に住む人々は穏やかで思慮深い方が多いと感じます。様々な工房での聞き取り取材では、他の地域より一歩踏み込んだ内容のお話も聞くことができることもあり、深く創造的な手工芸が多く行われる印象を持ちました。

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 フェルガナ盆地の工芸は、古くからの養蚕の地でもあることから繊維産業が特に盛んで、染物、織物に豊かな展開があります。絹の絣織の「アトラス織」は中央アジアの名産品として名高く、その生産の中心地となるのはマルギランという町。ここで立ち寄った工房はもはや工場の規模ですが、繭から糸を繰り染色、機織りも昔ながらの手法だとのこと。女工の熟練の手つきには無駄がなく美しいです。
 とても見応えのある大工房でしたが、養蚕農家の家庭で繭を自ら紡いで機織りなどはするかどうか、大規模な工房のなかった昔はどうだったのか気になるところです。

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 その工房から遠くない所には、古いイスラム神学校の建物を改装した更紗の工房があります。型紙ではなく染料を判子で綿布に押して染めるのがこちらの更紗の手法。職人が惜しげもなく染料の調合方法と配合を解説してくださいました。粘度のつけ方や色落ちしないような工夫もあるのはわかりました。が、染織分野の専門家ではない私は恥ずかしながら、終始、魔女のスープのレシピを教わっている気分でした。好奇心が空回りしないようもっと学ばなくてはいけません。

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 この盆地では陶芸も古くから盛んで、中でもリシタンという町は「イシコール」という植物の灰を高温でガラスの塊状に焼き固め、粉砕水簸した釉薬がかかった青色陶器で名高いとのこと。中央アジアでよく見ることができる青いドームの屋根を飾るタイルがまさにそれだそうです。こちらの分野も専門家ではありませんが、原理と用法が理解できましたので興味深くお話を伺うことができました。

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 今回の大きな取材対象の楽器工房にしても、想像力逞ましく古典絵画の細密風俗画から手掛かりを得た楽器を創造(復元と言いたいところをあえて創造としました)する職人に出会えたり、伝統を継承しつつも独創的な素材の活かし方の工夫と哲学に確固たるものがある工房に巡り会え、お話を伺ったり、実際に素材の加工を見せてもらったりと、驚きと発見の連続でした。

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 保守的な土地柄というナマンガンのバザールをふらつけば、民族色豊かな雰囲気が楽しく、ここが伝統に誇り高い地域であるのだなとの認識を新たに持ちました。
 見所いっぱいのフェルガナ盆地の取材は、今年は春と晩夏の2回となりました。しかしまだまだ探る必要があるかなと思っています。

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 山に囲まれた盆地という立地は、生活と文化に独特のリズムを産んでいるようです。同じウズベキスタン国内とはいえ、先立って訪れた南部や首都タシケントとは異なる民族性を示しているのがとても興味深いと思いました。
























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