ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

Ambiguous Horizon、記憶の記録

Posted by nakamura.m on  

会場風景
 今日は朝から、季節が大きく晩秋から真冬に入れ替わるような冷たい雨が降り続いています。

 作品が工房に戻ってきたので、それらひとつひとつにお礼をいいながら乾拭きで清めながら納品先に思いを馳せたり、来るべき次の展示に備えたりと手入れをして箱に納めていました。
オープニングで演奏してくださった古楽器奏者の立川叔男さんの録音を聴きながらの作業は、妙に儀式めいた感傷的な気持ちにさせられてしまいます。感動というと陳腐ですが、そのような心の動きも含め、今までとこれからの色々な思いが浮かんでは消える。そのような一日です。
 今回の展覧会を振り返れば、私の作家活動の転機となる経験になったような気がしています。実はそれ、企画中から予感していたことでもあるのです。

 手を動かしながら、今度は、ふととある言葉が頭の中によみがえりました。
それは小学校低学年の児童の頃に聞いた記憶だったか、『遠足は玄関の扉を開けて、ただいまを言うまで。』という一節。楽しかった遠足の帰路の記憶と、今回の楽しかった展覧会を成し終えた暖かい気持ちが重なったようです。

オープニング

 オープニングで演奏してくださった古楽器奏者の立川叔男さんは「”人”を時間経過で子供とか大人とかを分けることはあまり意味がないと思うのです。私は過去に関心をもたずに、ただ長い時間を過ごしただけで大人であると思ってしまうような傲慢さをもたないように心がけています。生きてきた時間を、記憶を、大切に積み重ねられる”人”でありたいのです。」と、演奏の合間に語りました。また、このようなことも言っておられます。「自ら目指すべき音楽とは如何なるものかと悩んでいた留学時代、たまたま海岸でさくら貝をそっと耳に当てた時、増幅されて聴こえてきた音に心奪われた。自然界のささやかな音までを拾い、増幅し、奏でるような、そんな貝殻のように音を奏でる音楽家でありたい。」と。

 その、積み重ねられ、忘れ去られることのない記憶を織り込んだ音色が成し得る表現力に触れ、我々が今回なぜ立川叔男さんをお招きしたかったのか、実は我々自身もよくわかっていませんでしたが、その理由が今は私なりに明確になった気がしています。それは何か。
 中村真、梶浦聖子のそれぞれの経験、特に海外留学を経験し大切に重ねた時間そのものを表現した”曖昧な景色”という空間と時間。作家としての自分が持つ情熱が発するわずかな波動は、立川さんの演奏というさくら貝の殻を通すことで増幅され、実は私自身で自分の熱量を再確認したかったということか。と。

 私自身はなかなか、曖昧な景色という展覧会とは何だったかを言葉にできぬままにいると、共にこの展覧会を作り上げたた梶浦聖子さんが先に、軽妙で素敵な言葉にしてくださっていました。展覧会で作品をご覧になった方は何となく感じていただいているかもしれませんが、いろいろな要素から取捨選択して練度を上げてゆく私の(仕事の?)性格とは対照的に、梶浦さんは直感的な表現に類い稀な能力を発揮されますが、言葉も言い得て妙なりです。
 まったくもって光陰矢の如し…のくだりは見事だとおもいました。
http://monasuky.blog.shinobi.jp/さんにんいじょうごと/またひとつ展覧会が思ひ出になりました

 さて、昨晩までは克明に振り返ることが出来た展覧会の記憶。その充足した記憶をしばし思い返しては楽しんでいた余韻も、今日の窓を映す、雨に煙る景色のように、輪郭がすこしずつ曖昧になってきたようです。
 それは今回の二人展の記憶を、胸に仕舞う時を迎えたということのようです。私にとっての、楽しかった遠足の帰路の記憶のように。

Ambiguous Horizon 〜曖昧な景色〜 ここではない、何処かへ。


ホライズン

 今後も表現活動を続けるかぎり、長い旅のように道程は続きます。
帰国して6年目、ゼロからの再スタートは紆余曲折ありながらも、ようやく最近になってありがたいことに展覧会が立て続けに参加できるようになってきましたが、決して傲慢さをもたないように、経験を大切に積み重ねられる私でいられるようにと心がけて参ります。
 最後になりましたが、足をお運びくださった皆様、事情あってご参加叶わずとも気に掛けてくださった皆様。どうもありがとうございました。

*お世話になりました、ギャラリー工+with
http://gallerykou.exblog.jp/20395460/

*おいしいソムサをありがとう、MAYRAMこと香織さん
http://mayram.shop-pro.jp/


平成26年11月26日 雨の日に 

中村 真  拝

スポンサーサイト

該当の記事は見つかりませんでした。