ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

図面を描いて想像する

Posted by nakamura.m on  

アフガンプボップ2



 私は学生の頃から、世に言う「名品」を含めて、良いとされる様々な作品を眺めていても、余程の印象に残らないかぎり、これは良いものであるかどうかという判断ができない性格なので、さらに名品たる裏付けを求めて書物などで予備知識に触れようとしますが、予備知識が増えれば増える程、自分なりの第一印象の判断が揺らいで、もやっとした気分になったものでした。
 ちょうど大学院の頃、古典研究というものがあり、芸大資料館蔵の漆絵のお盆を採寸して図面に描き写し、調査するという課題が課せられたことがありました。描き写しを通すと不思議と手を通して、予備知識以上の情報と、自分の判断でこれはいかなるものかといった捉え方が出来るようになったものです。
 これに味をしめ、学生時代は「世界美術大全集」とか「時代椀大観」といった大判の蔵書から、私の気になる図版や図面を描き写しをしておりましたが、結果的にこの試みが現在の私にとっても大きな財産となり、観る目を養うこと、気になる形体を把握すること、名品とされる理由を私なりに探る訓練としてこの手法は大きな正解でした。

 しかし後年、デジタルカメラでのデータ取りが容易にできるようになってから、撮って安心という気持ちになって手を動かすことを怠けていましたが、いざ新しく制作に活かそうと思った時、案外と記憶の引き出しに入っていないことに気がつきました。やはり、自分なりの把握には手を動かしてしか得られないのだとあらためて肝に銘じておくことにします。

アフガンルボップ採寸

 このような気付きもあり、気になるものを図面に描き写したいと思っていましたが、今回、縁があって、前々から気になっていた中央アジアの民族楽器を図面に描き写すことが出来ました。
 アフガニスタンの周辺に分布する「ラバーブ」とも呼ばれたり、ウズベキスタンでは「アフガンルボップ」ともいう楽器です。

キジル石窟8窟

 私がかつて調査で訪れた、新疆ウイグルの仏教遺跡「キジル石窟寺院」の石窟内部に描かれる壁画にも同様の弦楽器が描かれているように、3世紀頃からあまり姿を変えずに現代まで存在し続けることは色々と興味深いものです。

 今回の「ラバーブ」の胴は、一般的に言われるような桑材製ではなくて、ひじょうに目の詰まった針葉樹の材でできており、パミールの高山に生えていたヒマラヤ杉を思わせます。張られている弦は、共鳴弦が付属しているものの、メインは5本張られており、正倉院に伝わる五弦琵琶の仲間かなと想像してみればシルクロード的ロマンに浸ることも出来ます。

 図面描くのは楽しいです。これを基に、中央アジアに暮らしていた頃のように楽器も製作するというのも悪くないと思っています。


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