ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

世界遺産の和食と漆の話

Posted by nakamura.m on  

正月2014年


平成26年、あけましておめでとうございます。

 旧年はなにはともあれ個展を含む多くの発表活動ができて、幸せな一年でした。
いずれも多くの方々が足を運んでくださり、作品を介して実に様々なことを学ばせていただきました。 

 担当させていただいている漆や金繕いの講座や教室においては、漆を通してものを作る楽しさを感じていただければと思って取り組んでおりますが、作業に没頭している生徒さんの様子から、微力ながら漆の魅力を伝えることが出来ているのかなと手応えを感じるようになってきました。実は、私にとっての講座とは生徒さんの要望にお応えすることが私の漆知識の引き出しの活性化につながっていて、これまた学びの良い機会となっています。
 以上のように、多くの方々の関わりやご支援のおかげで旧年中も有意義な活動が出来ましたことをお礼いたします。どうもありがとうございました。

 さて、今日は新年によせて、私の希望についてと日本文化について、軽く一席講釈を述べさせていただきたいと思います。

 私の今年の希望としては、昨年末、”和食”がユネスコの世界文化遺産リストに登録されたことから、今後、国内だけでなく海外から、和食の中身だけでなく、供される”うつわ”に関心が集まるといった流れになってくれるような一年になってくれればいいなと思ってます。
ひいては、インターネットでの作品お問い合わせにつながってくれればいいなぁと。ともあれ、話を進めます。
 日本の食事を文化的側面で観察すると、周辺国の人々から見て特異に思われていることがいくつかあるとのことですが、とりあえず2つ程例を挙げたいと思います。




うつわに直接に口を付ける一品がある。しかも公式のもてなし晩餐の、いわゆる“フルコース”にあたる懐石の場において。


 口に直接口を付けるのは、西洋、近隣諸国を見回したとしても、大抵はしたない象徴のように考えられている節があります。犬食いなどと言われ忌み嫌われるものですが、懐石の場合、吸い物を西洋のように匙で掬って食べるのは見たことがありません。
 うつわを手に持ち、手から伝わってくる重さと温度と感触、微妙な香りを聞き、唇から流れる液体の温度や粘度を複合した感覚を楽しむ中で美味しいとか心地良いとかを判断する世界観というのは実に興味深いものです。
 以上のことを鑑みると、漆椀は、手と唇にふれて楽しみ、うつわを置いたときのかすかな音までも心地よく、料理を五感で感じさせる重要な役者といえます。それが、漆塗りのうつわが現在まで使われ続けている理由のひとつかもしれません。
 このことからも、もっと漆のうつわに注目が浴びてもいいなと思います。そして、もうひとつの事例。


こわれても直して使われるうつわ


 陶磁器が割れてしまっても、漆の強力な接着力を活かして修繕し、盛りつけに供されることがあります。
 壊れてしまっても、直せるものは直して大切に使いきるというのは、様々なものに魂が宿るという日本独特の思想からくる精神性の表現かもしれません。
 繰り返してしまうようですが、現代においてもこの修繕には古来からある天然素材である漆が最適なのです。化学接着剤のように、有毒物質が溶け出すこともなく安心安全。長い歴史の中でもその実績は充分。よって、もっと漆そのものにも注目されるようなことになればいいなと思っています。


金繕いウズ茶碗
 




 漆と和食のうつわについて、このような事例を細かく挙げればきりがないと言えるからこそ文化的に価値があるということなのでしょうか。 

 いささか我田引水に書き散らかしたような稚文、失礼しました。

 本年はこのようなことをふまえつつ、文化的な背景をもっと学び、制作や講座に活かして、漆を通した魅力発信につながるよう努力して取り組んでいきたいなと考えております。 


 皆様、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

平成26年 元旦  



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