ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

天平時代からある工夫

Posted by nakamura.m on  

漆皮
 スーツケースというものがあります。説明不要だと思いますが、箱状のカバンで旅において収納や運搬に便利なものです。

 遠い昔、倭(日本)の偉い僧侶が唐(中国)に仏教を学ぶために旅にでました。そして、手に入れた経典や袈裟などを長く過酷な旅路で持ち帰る時に使ったスーツケースは、牛革を材料にした箱に漆を塗ったものだったようです。それは金属の箱のように錆びず、木の箱のように割れてしまうこともなく、両者に比較して頑丈で軽いこともあり、駱駝の背に載せられ荒野を越えたり、潮を被って進むような船旅においては重宝されていたようです。このような漆皮技法のスーツケースは「袈裟箱」と称され、数百年の時を越えた現在に至るまで正倉院に納められています。

 漆皮の基本的な制作方法は、木原型に水に漬けた牛革を張付けてテンションを掛けたまま極限まで乾燥させ、型から外して漆を塗り込むというものです。規格品を量産するのには悪くない技法と言えます。(但し現代においては、時間と予算を度外視すればの話ですが。)
 特徴は、前途のように軽く頑丈ということが言えますが、素地が長い時間をかけて小さく揺らぐような変化を見せるといったことも挙げられます。そういったことは風雅な味わいとして面白いという鑑賞の評価があるようです。

 ちなみに天平の後、戦国時代になると、素材としての牛革は鎧や馬具などの軍需産業に優先され、袈裟箱のほか、多く作られた日用の漆皮製の箱やうつわは途絶えてしまったようです。

 漆皮・黒のうつわは、古くて新しい試みとして、天平の時代に流行した技法で制作した作品です。今後どのような揺らぎを見せてくれるのでしょうか。




作品名:漆皮・黒のうつわ
サイズ:高6㎝×幅50㎝×奥25㎝
素材:漆、牛皮、麻布、木材
技法:漆皮造形、きゅう漆

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