ナカムラマコトの世界 / Мир Макото Накамуры

漆工芸家「中村真」の作品と展示情報を主に、かつて暮らした中央アジアの風景と工芸にも触れていきます。

うたかたの燕子花

Posted by nakamura.m on  

日暮風景2

 たぶん、最後になるであろう、この土地の燕子花が咲き誇っています。
畑と路の境界に、土の流失を止める為に植えられた名残。
 今、消費増税前の駆け込みだろうか、土地の所有が変わって宅地造成真っ盛り。毎日重機が唸っています。地鎮祭をしてからというもの、土地をならして、家がカタチになる速度は、私が制作する作品よりずっと速くて驚きます。

日暮風景1

 今の工房に住みはじめた頃は手入れをされていた緑の畑でしたが、いつしか地主は耕すことをやめ、たまに現れては草や花々に狂ったように枯れ葉剤を撒き散らすような枯れ色の空き地になりました。
 それでもまた、うっすらとぺんぺんと草が生えて落ち着く頃には、朝はどら猫が気ままに過ごし、午後は子供が駆け抜け、夕方はこうもりが舞うといった、日常が繰り返されていました。そんな工房からの日常の光景は、遠くないうちに記憶の世界だけになるのだろう。


日暮航空写真2

日暮航空写真1


 私の住む土地の変遷を辿りたくなりました。
 国土地理院のホームページから検索すると工房周辺の航空写真を見ることが出来ます。上は昭和30年くらい。下は昭和50年くらい。二枚の画像を見比べると、工房の前の宅地造成など、庭いじりの範疇と言えそうです。高度経済成長の土地の改造は革命とも言い換えることができそうな規模であり、そのスケールに驚愕します。
 昭和30年頃、工房は小高いこんもりした林だったようです。そして、谷すじの田んぼに沿ってうねうねと通う道沿いには、最近でもこどもの日に巨大こいのぼりを掲げる、近所の大きい屋敷がすでにあるようです。

 NHKラジオを作業中に聞くことが多く、聴取者の対象年齢が高いことも反映しているのか、投稿お便りでも、昭和の昔を懐かしむ声が多いです。私もついつい見慣れた光景が変わりゆくのは寂しい喪失と不安の気持ちになったりするものですが、だからといって嘆いたり固執することはしない方がいいと思います。変わっていくことは世の常。
 しかし世の常はさておき、素敵な日常の光景は頭に焼き付ける価値があるのかもしれません。
 いつかまた「今年初めての夏日です。」とラジオが伝える頃、私は、燕子花が見える工房の記憶の断片を引っ張りだしてこれたらいいだろうな、と思うのだ。

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